中国文化史叢書


中国文化史叢書 前回、姚名達『中國目録學史』(商務印書館, 1938)の名前を出した際、久しぶりに、戦前の商務印書館の「中國文化史叢書」のことを思い出しました。

 といっても、私は弱輩者ですから、1930年代のことは存じません。大学院に入りたての頃、この叢書の存在を知り、「これだ!」と感動したことを思い出しただけです。

 1897年、上海に設立された商務印書館は、張元済(1867-1959)の奮闘により、まさに近代中国を代表する大出版社となりました。伝統中国を研究する人には、ことに「四部叢刊」「百衲本二十四史」「叢書集成」がなじみ深いでしょう。ハンディな文庫本のシリーズ「万有文庫」も、近代における啓蒙を力強く支えました。

 今日、ご紹介したいのは、その商務印書館が1936年から1939年にかけて出版した「中國文化史叢書」(王雲五, 傅緯平主編)です。長い歴史を有する中国文化を、近代的な感覚で総括した通史のシリーズです。以下にその目録を挙げますが、「これだ!」と思っていただけますでしょうか?

 王雲五, 傅緯平主編「中國文化史叢書」第1輯は、次の通り。

 『中國經學史』馬宗霍著.商務印書館, 1936
 『中國文字學史』胡樸安著.商務印書館, 1937
 『中國理學史』賈豊臻著.商務印書館, 1936
 『中國算學史』李儼著.商務印書館, 1937
 『中國田賦史』陳登原著.商務印書館, 1936
 『中國度量衡史』呉承洛著.商務印書館, 1937
 『中國鹽政史』曾仰豐著.商務印書館, 1936
 『中國醫學史』陳邦賢著.商務印書館, 1937
 『中國法律思想史』楊鴻烈著.商務印書館, 1936
 『中國商業史』王孝通著.商務印書館, 1936
 『中國政黨史』楊幼炯著.商務印書館, 1936
 『中國陶瓷史』呉仁敬, 辛安潮著.商務印書館, 1936
 『中國交通史』白壽彝著.商務印書館, 1937
 『中國繪畫史』兪劍華著.商務印書館, 1937
 『中國南洋交通史』馮承鈞著.商務印書館, 1937
 『中國駢文史』劉麟生著編.商務印書館, 1936
 『中國殖民史』李長傅著.商務印書館, 1937
 『中國考古學史』衞聚賢著.商務印書館, 1937
 『中國婚姻史』陳顧遠著.商務印書館, 1936
 『中國民族史』林惠祥著.商務印書館, 1936

 王雲五, 傅緯平主編「中國文化史叢書」第2輯は、次の通り。

 『中國目録學史』姚名達著.商務印書館, 1938
 『中國訓詁學史』胡樸安著.商務印書館, 1939
 『中國水利史』鄭肇經著.商務印書館, 1939
 『中國音韻學史』張世祿著.商務印書館, 1938
 『中國倫理學史』蔡元培著.商務印書館, 1937
 『中國漁業史』李士豪, 屈若搴著.商務印書館, 1937
 『中國道教史』傅勤家著.商務印書館, 1937
 『中國建築史』伊東忠太原著;陳清泉譯補.商務印書館, 1937
 『中國税制史』呉兆莘著.商務印書館, 1937
 『中國音樂史』田邊尚雄著;陳清泉譯.商務印書館, 1937
 『中國政治思想史』楊幼炯著.商務印書館, 1937
 『中國韻文史』澤田總清原著;王鶴儀編譯.商務印書館, 1937
 『中國救荒史』訒雲特著.商務印書館, 1937
 『中國散文史』陳柱著.商務印書館, 1937
 『中國教育思想史』任時先著.商務印書館, 1937
 『中國俗文學史』鄭振鐸著.商務印書館, 1938
 『中國日本交通史』王輯五著.商務印書館, 1937
 『中國地理學史』王庸著.商務印書館, 1938
 『中國婦女生活史』陳東原著.商務印書館, 1937
 『中國疆域沿革史』顧頡剛, 史念海著.商務印書館, 1938

 錚々たる学者たちがここに名を連ねています。断言は出来ませんし、分野による違いもあるでしょうが、全体として、完成度の高いものが多いと思います。これを3年程度で出してしまうのですから、時代の勢いを感じます。

 もちろん、全部読破して常識を身につけたいとは思ったのですが、私が目を通したのは、結局、『中國經學史』『中國文字學史』『中國度量衡史』『中國目録學史』『中國訓詁學史』くらいのものでした。今からでも、おそくはないでしょう。あらためて、もう数冊、読んでみようと思っています。

 なお、手元にある『中國目録學史』の末尾に「中國文化史叢書」の広告が載っており、基本的にそれと照らし合わせて、上記の紹介をしたのですが、元の目録からの変更点がひとつあります。第2輯の3番目が、元の目録では「『中國哲學思想史』汪馥泉譯述」となっているのですが、それが結局、完成しなかったらしく、『中國水利史』に置き換わっているのです。

 また、1939年に「中國文化史叢書」の一つとして、郭箴一『中國小説史』というのが出ているのですが、これは出版計画のどこに納まるものなのか、不明です。

 興味をひかれるのは、『中國建築史』『中國音樂史』『中國韻文史』と三つまでも、日本人の著作が採用されていることです。おそらく出版に到らなかった『中國哲學思想史』も、同様でしょう。日本は1932年の上海事変(一二八事変)で、商務印書館の建物を焼き、多大な損害を与えましたから、当時の商務印書館は反日であったような印象を持っていたので、少し不思議に思いました。姚名達などははっきりと反日です(「愛国目録学者」の異名をとる)。どのような経緯で選書が進められたのか、知りたいものです。

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