筆名大王のこと


 近代中国の人物について調べようとするとき、私が真っ先に見るのは、陳玉堂『中国近現代人物名号大辞典』(浙江古籍出版社、1993年)です。

 中国の伝統的な文人は、自称・他称を含め、さまざまな呼称を持っています。なかでも号などというのは、なかなか調べにくいものです。

 清朝の人物については、楊廷福・楊同甫編『清人室名別称字号索引』(上海古籍出版社、1988年)がよく使われます。しかしこの書物は、単にそれぞれの個人の本籍・アザナ・号・別称・室名などを表にしているに過ぎません。使いようはありますが、限られています。

 一方の『中国近現代人物名号大辞典』は、本籍・アザナ・号・別称・室名以外に、生卒年・幼名・略歴・著書・親族などを網羅的に挙げています。しかも、号などがいつどこで使用されたのか、周到に根拠を挙げてあります。

 たとえば黄侃(1886,一作1887-1935)に異名が多いのは有名ですが、『中国近現代人物名号大辞典』によると、次のように列挙できます(根拠は省略します)。

 幼名:緒琳
 譜名:喬馨
 学名:喬鼐
 字:季剛
 早字:梅君
 又字:禾子・季子・季康
 号:運甓・運甓生
 別署・筆名:曠処士・病蝉・病禅・剛翁・不侫・鼎苹・鼎革・鼎莘・奇恣・奇談・信川・静婉・盛唐山民・黄十公子・亦陶・量守居士・寄勤閑室主人
 室名:六祝齋・雲悲海思廬・仰山堂・橋秀庵・寄勤閑室・量守廬・感鞠廬・楚秀庵・?秋室・?秋華・?華室・?秋華室

 まあ、この調子で一万人以上の人を調べ上げているわけです。「作者簡介」によると、「陳玉堂、アザナは書石、別号は紫琅山民・百盂齋主。1924年生まれ。江蘇南通の人。上海社会科学院文学研究所副研究員、九三学社社員。長きにわたり中国近現代の人物伝記資料及び別名・筆名の蒐集と研究に従事し、「筆名大王」の誉れを有する」云々とあります(より詳しくは、こちらから)。すごい執念を感じます。

 この書物はたいへんに便利なものなので、私は「大王、大王」と敬愛して止みません。増訂版が出ていますが、旧版を愛するあまり、なかなか新版に乗り換えられません。

*『中國近現代人物名號大辭典』(浙江古籍出版社、1993) Webcat所蔵図書館 65館(本日付)。

*『中國近現代人物名號大辭典』(浙江古籍出版社、全編増訂本、2005) Webcat所蔵図書館 28館(本日付)。

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