『説文』と『新華字典』


最近、聞いた中国の学林の話題を紹介します。

文革中、学問などできる環境になかったころ、後に経学の分野で名をなしたP先生は、『説文』を熱心に読まれたそうです。これで文字に通じ、学問の根柢ができた、とのこと。今でも、文字を学びたいという学生には、まず『説文』540部の部首をすべて暗誦させるそうです。

これも文革中、学問などできる環境になかったころ、後に古文字学の分野で名をなしたQ先生は、『新華字典』を熱心に暗記されたそうです。これで文字に通じ、学問の根柢ができた、とのこと。今でも、学生には、まず『新華字典』を1ページ目から通読させ、丸暗記させるそうです。「1ページ暗記したら、破って捨てる」とも聞きましたが、これはまた聞きなので、真偽のほどは分かりません。

この話を聞いて、さまざまな感情がこみ上げました。文革中というと、学問不毛の時代と思われており、それも理由のないことではないのですが、このように、かげながら克己されていた学人がいらしたからこそ、今の学界の繁栄があるのでしょう。これがひとつ。

また、「それくらい集中してやらないと、学問はものにならない」、とも思いました。21世紀の我々は、あまりにも書物に恵まれすぎていて、何か間違っているのではないか。そういう疑念が消えません。

とりあえず私も、『説文』540部の暗記に挑戦します。そういう、私を鼓舞するような、二つのエピソードでした。これを読者の皆さんと分享したいと思い、ここに書いてみました。

広告

「『説文』と『新華字典』」への7件のフィードバック

  1. Xuetui様、いつも興味深い話題ありがとうございます。
    『説文』は常々読みたいと思っておりました。各説解に関連する話題も取り上げて下さると嬉しいです。或いは『説文』専用のブログをご検討下さるというのは如何でしょうか。お忙しいところ、無理をお願いして申し訳ありませんが、ご検討下さると幸いです。

  2. Hirshさま、コメントくださいまして、ありがとうございます。
    さて『説文』の件ですが、ご希望とあらば、おこたえしたいのは山々ですが、浅学ゆえ、よい内容が書けるかどうか。とても専用のブログとまではゆきません、ただ気づいた点などをたまに書くようにしたいと思います。
    語学・小学の専門家ではないものの、年を追うごとに、この分野に対する関心が深まっています。今後とも、よろしくお付き合いください。

  3. Xuetui様、ご検討下さいまして、ありがとうございます。
    ご無理を申し上げたようで申し訳ありません。まだ力不足ではありますが、私も『説文』に挑戦してみようと思っています。出来ましたら、日々の指針になるような記事も取り上げて頂けたら、嬉しい限りです。これからもブログ、楽しみにしております。

  4.  Hirshさま、いえいえ、とんでもありません、単純に私の能力的な問題です。

     『説文解字注』一冊で、そうとう人生が楽しめそうだと思っております。漢字を考察する道具として、『説文解字』はそれ自体として研究すべきであり、古文字学とは一線を画すべきだ、という主張があります。私はむしろ、その立場を取りたいのです。むろん、近年、多く出土している古文字は、非常に大きな価値があり、その研究も重要なのですが、私自身としては、まず『説文』を自分なりに納得してからでないと、先に進みたくないように思っております。

     たとえば、「三」の説解に「數名。天地人之道也」とあるのなどは、とても面白く感じます。許慎は「萬物咸覩、靡不兼載」と言いましたが、彼にはどんなふうに世界が見えていたのか、強く興味を引かれます。上古音の勉強がてら、『説文』及び段注を読んでみようと思います。

  5.  私は学問に従事する者ではございませんが、大変感銘を受けました。こういうエピソードは、「他人事」として読むのは大好きです。自分には無理だと尻込みしていましたが、今朝になって、なぜか私も急に発奮致しました。
     ところが、私は『説文』をまともにひもといたこともありませんので、正直どのように暗記をするものなのかがよく分かりません。『説文』どころか、漢字のことすら分かっていないくらいの初心者でございます。
     そこで本当に初歩的な質問でお恥ずかしいのですが、部首540部の暗記というのは、文字通り部首のみを暗記するものなのでしょうか。それとも、例えば「一」部でしたら、「惟初太始道立於一造分天地化成萬物凡一之屬皆从一」などのように部首+『説文』の原文までを暗記するものなのでしょうか。
     真似事で終わってしまう恐れが大いにありますが、その過程で何かを得られれば、と思っています。Xuetui様に出会ってからというもの、「飽きる」ということが全くなくなりました。これからも楽しい記事を期待しております。

  6.  まっつんさん、コメントありがとうございます。

     ちょっと、『説文』をまじめにやってみましょうか。とりあえずの目標は、540の部首の配列を覚えることです。数日前、部首を書き出してみたのですが、読み方の分からないものがあまりにも多く、自分の学のなさにあきれました。そこで、いま、部首の音(上古音、中古音、現代音)を調べている途中なのですが、とにかく多いので、なかなか終わりません。できあがりましたら、ここにアップしますので、それをもとに勉強してゆきましょう。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中