『読書の学』の読みがたさ


吉川幸次郎『読書の学』(筑摩書房、1975年)を若い漢学徒に読んでもらいたいと願っています。しかしその一方で、「本書は読みがたい」という思いもあります。

20代の頃、初めて本書を読んだ時、「たいへんに面白く、しかも重要な著作だ」と感じました。今、あらためて読みかえしてみると、「たいへんに面白く、しかも重要ではあるけれども、難しい」という印象です。授業の必読書リストに追加するなら、いくつかの但し書きがいるかも知れません。試みに、ここに列記してみます。

  1. 粗雑に読むなかれ。「細心の読者」を目指しましょう。特に引用文は読み飛ばさずに。ただ、丁寧に読むのが難しいのも事実ですから、時間をかけて読みましょう。
  2. 博識に驚くなかれ。著者の博学に目がくらめば、著者の伝えたいこと、思考の軌跡を追いがたくなります。
  3. 知識を得ようとするなかれ。知識を得るための便利本ではありません。考え方を読み取ってください。
  4. 言葉にとらわれるなかれ。著者の用いる概念には明瞭でないものが含まれており、英文学や国文学にも言及が多く、十分に専門的でない場合もありますが、時に、意を汲むことも必要です。批判はむろん結構ですが、そこで投げ出したり、軽んじたりするのはやめてください。

私自身、十分に著者の行論を追い切れないところもありますが、ただ、それはどうやら私の問題ばかりでもなさそうで、第19回に引用されている、島田虔次氏から著者に宛てられた年賀状には、「「ちくま」のご連載、佳境に入るが如く、入らざるが如く、甚だ人をして焦燥せしめます」とあった、とのこと。大学者と引き比べるのは恐縮ですが、著者の思索の行き先の見定めがたさは誰にとってもかわらぬようです。

20代の頃には、なぜ本書を難しいと思わなかったのか?読みに慎重さが足りなかった、というわけです。「読書の学」を分かったつもりで、分かっていませんでした。上に挙げた四つの戒めは、つまるところ、過去の自分に対する苦言に他なりません。

「読書の学」を如何に身につけるか?それが要点です。

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