耳を切られて


四部叢刊初印本(左)と注疏叢刊本(右)
四部叢刊初印本(左)と注疏叢刊本(右)

四部叢刊に収める『老子』について言うと、初次印本と重印本の内容が少しばかり異なる、と書きました。そうは言っても、四部叢刊の初次印本も重印本も、貴重な線装本であり、一般の図書館では自由に閲覧できるものではありません。

私も初次印本のコピーを取りたいと思ったのですが、線装本のコピーはさすがに気が引けます。しかし、是非ともコピーする必要があったので、方法を考えました。北京の中華書局が1998年に出した「四部要籍注疏叢刊」というシリーズに収められた『老子』河上公注本が、四部叢刊の初次印本をもとにしたリプリントらしい、と気づき、これをコピーしたのです。

「四部要籍注疏叢刊」。四部叢刊の『老子』の初次印本をリプリントするという、素晴らしい着眼点なのですが、やや残念なのは、匡郭(木版本の上下左右を区切っている枠)内の内容は保全されているものの、それ以外の部分、すなわち「枠の外」が排除されている点です。

たとえば、「本の耳」である耳格が削除されています。耳格(書耳ともいいます)とは、宋版などによく見られるもので、各葉の枠の左上に篇名などを記す、古雅なものです。この宋版『老子』建安虞氏家塾刻本にも見えるのですが、一律に省かれています。

また、枠の外に書き入れた記録や印が抹消されています。巻上の終わりには、正徳11年(1516)と乾隆58年(1793)、二度の修理の記録が記されていますが、これも削除されており、味わいをやや減らした感があります。

なお、原本は現在、北京の国家図書館に蔵されていますが、かつては有名な大蔵書家、黄丕烈(1763-1825)の所持品でした。黄丕烈の蔵書記録、『百宋一廛書録』(嘉慶8年、1803序)にこの本を録して、「惜墨敝紙渝、且俗工装裱、殊不耐觀」と、その紙墨と装丁のまずさを言っています。いつか、原本を見る機会を得られれば、その装丁を拝んでみたいものです。

書物の内容にまったく関わらぬことですが、一人の本好きとして、善本の細部にも愛着がある、という話です。

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