侯景は冗談を言えたか


陳寅恪「書魏書蕭衍伝後」(『金明館叢稿初編』上海古籍出版,1980年)という短文を読みました。

『魏書』巻98,島夷蕭衍伝の次の一段が問題とされています。

衍每募人出戰,素無號令,初或暫勝,後必奔背。景宣言曰「城中非無菜,但無醬耳」,以戲侮之。
蕭衍は何度も兵を募ってたたかいを挑んだものの、そもそも号令をかける者がなく、少し勝利したこともあるが、後にはきまって敗走する結果となった。侯景は大きな声で「城中には野菜がないわけではないが、調味料がないのだな」といって、侮辱した。

梁の武帝(在位502-549)が、逆賊の侯景(503- 552)に取り囲まれている場面で、侯景が武帝を挑発して「城中非無菜,但無醬耳」と言ったのですが、これは陳寅恪によると、「城中には”菜”(卒、すなわち兵卒)はあるが、”醤”(将、すなわち将軍)はない」という意味のからかいです。

陳寅恪は、この冗談を思いついた人を探り、侯景の参謀、王偉という人物がそれに当たるのではないか、と推測しています。「侯景は「清流」ではないのだから、こんな「雅な冗談(「雅謔」)を作って梁武帝をからかうことなど、できるはずがない」と陳氏は言うのですが、果たしてそうでしょうか?私は侯景にも言えたのではないかと思うのですが。伝統中国では「冗談は教養」と見なされていたのかも知れません。

陳氏の主眼は「菜と卒との発音が通じる方言を探ること」にあるのですが、私はむしろ、侯景には「雅謔」は言えない、と考える陳氏の思考法に興味を覚えました。

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