平仄に着目して、古文を読む


啓功『詩文声律論稿』(中華書局,1977年)は、平仄(ひょうそく)という手がかりによって中国の詩文を読み解く著作です。唐代の近体詩や六朝後期の駢文が、平仄のルールにしばられていることは、よく知られることです。またその萌芽として、漢代の詩文などにおいてもすでに平仄が意識されていたらしく、啓功氏が賈誼「過秦論」を挙げて説明したことを、昨日、紹介しました。

六朝から唐代にかけて発達した「駢文」は平仄の調和を追求した美文ですが、平仄を過度に整えたせいもあり、唐代の中期には表現が固定化・陳腐化してきていました。そこで韓愈らが徹底的に駢文を批判し、「古文」という文体の「復活」を唱えたのです。

唐代以来の「古文」は駢文を否定した上で成り立ったわけですが、では、その「古文」では、平仄が無視されているのかどうなのか。啓功氏は、「古文」でもちゃんと平仄が意識されている、というのです。啓功氏が分析する王安石「讀孟嘗君傳」は、「古文」の代表作。その文をまずはお示ししましょう。

世皆稱孟嘗君能得士,士以故歸之,而卒賴其力,以脫於虎豹之秦。 嗟乎!孟嘗君特雞鳴狗盜之雄耳,豈足以言得士?不然。擅齊之彊,得一士焉,宜可以南面而制秦,尚何取雞鳴狗盜之力哉?雞鳴狗盜之出其門, 此士之所以不至也。

これを、啓功氏は次のように分析します。平声は朱で、仄声は青で強調します。二文字を一単位とし、それを「節」と呼び(昨日いった「小箱」)、その二文字目が平字のものを「平節」、仄字のものを「仄節」といっています。

世 皆稱 孟嘗君 能 得士, (平節/仄節。抑調)
士 以故 歸之, (仄節/節。揚調

而 卒賴 , (仄節/仄節。抑調)
以 於 虎豹 之秦。 (平節/仄節/平節。揚調)

嗟乎! (平節)
孟嘗君 特
雞鳴 狗盜 之雄 耳, (平節/仄節/平節。揚調)
豈足 以言 得士? (仄節/節/仄節。抑調

。 (平節。揚調)
齊 之彊, (平節/平節。揚調)
得一 士, (仄節/平節。揚調)
宜 可以 面 而 , (仄節/仄節/平節。揚調)
尚 取 雞鳴 狗盜 之 ? (仄節/平節/仄節/平節。揚調)
雞鳴 狗盜 出 其門, (平節/仄節/仄節/平節。揚調)
此士 之 所以 不至 也。 (仄節/仄節/仄節。すべて抑調で、断定的に言い切る)

「不然。擅齊之彊,得一士焉,宜可以南面而制秦,尚何取雞鳴狗盜之力哉?雞鳴狗盜之出其門」まではすべて揚調で興奮気味に表現し、最後の一句「此士之所以不至也」を抑調で自信をもって言い切る。こんな感じです。

皆さんも、「平仄」を意識して中国文を読んでみませんか?

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「平仄に着目して、古文を読む」への3件のフィードバック

  1. 大変難しい、学生の頃あまり漢文を勉強しなかった為。芝中当時の漢文の原先生だったら、この程度簡単と思えるが、、、、現在千字文の草書の練習中である。

  2. 紺谷様

    コメントくださいまして、ありがとうございます。平仄、少し意識を向けるだけで、もっと読書を楽しめると思い、紹介した次第です。今後ともよろしくお願いします。

    学退復

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