史記という熟語


同じ韻部に属する二字を合わせた熟語を「畳韻語」と呼んでいます。古い漢語には、おびただしい数の畳韻語が存在しており、そのうち、「丁寧」「辟易」「芍薬」「沐浴」などの熟語は、今の日本語にも遺っているほどです。

「史記」の上古音について、王力氏は*ʃǐɘ kǐɘと推定しています。二字とも「之部第一」と呼ばれる韻部に属しています。「史記」という語は、「史官の記録」というほどの意味ですが、現在では司馬遷の著作の書名(もとは『太史公』『太史公書』といいました)として、より広く知られています。「史記」という語も、(ゆるやかに言えば)よく熟した畳韻語のひとつのようです。

『説文解字』(三篇下、史部)で「史」の字を見ると、次のように説かれています。

史,記事者也。从又持中。中,正也。

この「史,記事者也」のところを、試みに王力氏の推定する上古音で示してみましょう。

*ʃǐɘ, kǐɘ dʒǐə ȶiɑ ʎia.

「史」「記」「事」の三文字が、すべて「之部」に属することが分かります。「記事」もまた、畳韻語です。

これはおそらく偶然ではなく、『説文解字』を書いた許慎が、あえて似た音を持つ字を用いて、「史」を説明したものと考えられます。

『説文解字』では、しばしば同部の字を用いて文字の説明をおこなっています。たとえば一篇上(一部)に見える「吏,治人者也」の「吏」「治」はともに「之部第一」に属し、また三篇上(共部)に見える「共,同也」の「共」「同」はともに「東部第十」に属します。

このような文字どうしを「畳韻の関係にある」といいます。

畳韻。漢語を学ぶ上で、かなり重要な手がかりであるように思っています。

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中