『中国仏教史籍概論』日本語版


最近、陳垣(1880-1971)の名著、『中国仏教史籍概論』(中華書局、1962年。初版の序文は1955年10月)の日本語版が出版されました。

西脇常記・村田みお訳『中国仏教史籍概論』、知泉書館、2014年1月

中国仏教史籍概論
中国仏教史籍概論

陳垣の書物を日本語に訳したものとして、かつて野口善敬氏による訳註、『訳註清初僧諍記―中国仏教の苦悩と士大夫たち』(中国書店、1989年)が刊行されました。

それに続き、本書、『中国仏教史籍概論』が日本語に訳されたわけです。陳垣の学問を敬愛する者として、陳氏の業績が日本の読者にとって身近なものとなったことを嬉しく思います。

本書は、中国仏教史にも造詣の深い陳氏が、史書としての内容を備える仏教関連書籍を解説したものです。それらの書物により史実を考証することに主眼が置かれているため、中国仏教の概説というわけではありません。

あわせて六巻、目録書や僧侶の伝記など、三十五部の書物を紹介しています。もともと戦前、陳氏が講義用に書いた原稿を、解放後に出版した著作とのこと。

  • 巻一 『出三蔵記集』/『歴代三宝記』/『開元釈教録』
  • 巻二 『高僧伝』/『続高僧伝』/『宋高僧伝』
  • 巻三 『弘明集』/『広弘明集』/『法苑珠林』/玄応『一切経音義』/慧苑『華厳経音義』
  • 巻四 慧琳『一切経音義』/希麟『続一切経音義』/『輔行記』/『景徳伝燈録』/『五燈会元』
  • 巻五 『宝林伝』/『北山録』/『伝法正宗記』/『釈門正統』/『仏祖統紀』/『法蔵砕金録』/『道院集要』
  • 巻六 『禅林僧宝伝』/『林間録』/『羅湖野録』/『仏祖通載』/『釈氏稽古略』/『神僧伝』/『大蔵一覧』/『法喜志』/『長松茹退』/『呉都法乗』/『南宋元明僧宝伝』/『現果随録』

目録学の基本書、『四庫全書総目提要』の内容を基準として、それに補正を加えるスタイルで上記の仏教関連書籍を解説しています。陳氏の考証は着実、学風は端正で、今なお輝きを失っていません。

「民国時代の優れた学術成果について、我が国の漢学は十分に吸収出来ていないのではないか」、と常々遺憾に思ってきましたが、このような名著の翻訳は、研究者へのよい刺激となるとともに、読書界の渇を癒すものでもあるに違いありません。

日本語版の「訳者あとがき」によると、西脇氏が学生諸氏とともに訳稿を作られたのを基礎とし、西脇・村田両氏があらためて訳注を検討し、統一をはかり、注記も大幅に加えて成稿を得たもの、との由。よく練られた訳文からは、陳垣の語気まで伝わるようです。この日本語版の登場を心より喜んでいます。

【補記】慎重に吟味された訳注ではありますが、少しだけ誤字がありました。気付いたものを並べ、訳者ならびに読者の参考に供します。

  • p.41, l.12 「編集周永年」→「編修周永年」
  • p.43, l.17 「干闐」→「于闐」
  • p.43, l.23 「北宋の王応麟」→「南宋の王応麟」
  • p.64, l.2 「大蔵経は」→「大蔵経では」
  • p.74, l.9 「三十巻」→「三十一巻」
  • p.112, l.14 「経籍纂詁」→「経籍籑詁」
  • p.138, l.12 「『学海堂』初集」→「『学海堂集』」あるいは「『学海堂初集』」(p.156, l.7も同じ)
  • p.152, l.14 「影印本」→「影写本」
  • p.157, l.22 「詁訓精舎」→「詁経精舎」
  • p.169, l.11 「小学の学」→「小学」
  • p.174, l.14 「『渓廬詩稿』、『廬駢文選』、『淮南許注異同詁』、『字林逸補本』」→「『淮南許注異同詁』、『字林考逸補本』」(『渓廬詩稿』等は別人の著)
  • p.249, l.20 「後漢にかけて」→「新にかけて」
  • p.269, l.4 「従祖(父方の祖父の兄弟)」→「従祖(祖師を同じくする傍系の先世代)」(恵洪の二代上の師、恵南は、石霜楚円に師事。宗杲の四代上の師、楊岐方会も石霜楚円に師事。つまり恵洪・宗杲の禅はともに楚円を祖とするが、恵洪の方が世代が上。血統になぞらえていば、傍系の尊属に相当する)
  • p.271, l.4 「黄色庭堅」→「黄庭堅」
  • p.272, l.15 「洞山良介」→「洞山良价」
  • p.276, l.4 「大雑把であり」→「粗雑であり」(原文「疏闊」、p.278, l.8も同じ)
  • p.288, l.11 「彼女を僧と考えたので、特に詳しく述べた」→「彼女を(尼でなく)僧としたので、(ここに)特に詳しく述べた」
  • p.293, l.16 「三十七編」→「三十七篇」
  • p.297, l.10 「『仏祖歴代通載』では韓愈をある時代の偉人であるとしながらも、」→「韓愈は一代の偉人であるのに、『仏祖歴代通載』では」
  • p.309, l.14 「一千一百八十一則通行本」→「一千一百八十一則。通行本」
  • p.315, l.19 「広西省」→「江西省」
  • p.319, l.10 「祟禎帝」→「崇禎帝」
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