天明年間の京都


久しぶりに街に出て古書店をのぞいてみたところ、木版画が目にとまりました。gion1

天明六年(1786)版の『都名所図会』という本から切り離したもののよう。三十枚ほどのうちから、さっそく数枚を選び取り、購入しました。

gionまず第一枚は「祇園會(ぎをんゑ)」。

京都の夏の風物詩である祇園祭の様子を描写したもので、其角の句、「鉾に乗る人のきほひも都哉」が添えられています。

山鉾は、「長刀鉾」のようです。祇園祭山鉾連合会のウェブサイトに詳しい説明があります。

前懸はペルシャ花文様絨毯、ペルシャ絹絨毯(古)、胴懸には中国玉取獅子図絨毯、十華図絨毯、梅樹図絨毯、中東連花葉文様インド絨毯など16世紀~18世紀の稀少な絨毯が用いられていたが、現在はその復元品を使用。

そう言われて版画を眺めてみると、前懸・胴懸とも、確かに立派なものに見えますね。

hyakuman次に第二枚は「長德山知恩寺(ちやうとくさんちをんじ)百萬遍(ひやくまんべん)」。

わたくしの勤務する京都大学の対面に位置する浄土宗の古刹です。

現在では毎年、「秋の古本まつり」が開催されるのは、このお寺の境内です。版画の右端には「北白川通」の表記も見えます。

daigo最後の第三枚は、「上醍醐(かみのだいご)」。

わたくしは醍醐寺(下醍醐)が好きで、このお寺の近隣に住まいしているので、とりわけ親しみがあります。上醍醐には、下醍醐からは山道をたどりつつ小一時間で到着することができますので、子どもを連れて年に数回は登っています。この辺りは変化が少ないので、たいへんに馴染み深い景色です。

なお、平成二十年八月二十四日未明、上醍醐准胝観音堂が落雷により全焼するという、痛ましい出来事がありました。就寝中でしたが、ものすごい音がして目を覚ましたことが、今でも忘れられません。この版画を見ると、その場所は「観音堂地」と書かれているようで、当時も現状と同様、伽藍はなかった模様ですが、醍醐に住む者としては、一日も早い准胝観音堂の再建を願っております。

さて、かくして三枚の版画を購入したわけですが、店主と少し言葉をかわしたところ、「端本で入ってきた『都名所図会』をこうして切り離して売っているんです。揃いのものは本として売ります」とのこと。日頃から典籍に触れている者として、切り離すことにやや抵抗があるのですが、きちんとした考えをお持ちであることを知り、清々しい思いで買うことができました。

なお、この天明六年版の『都名所図会』、国会図書館のウェブサイトから閲覧することができます。デジタルはデジタルとして、本物の木版を飾って眺めることができるのは、ささやかな幸せです。