『校讎蒙拾 読韓蠡解』


江辛眉(1922-1986)の『校讎蒙拾 読韓蠡解』という本を読みました。

江辛眉 『校雠蒙拾 读韩蠡解』

海豚出版社(海豚书馆),2014年11月

著者の江辛眉は、上海師範学院(現、上海師範大学)にて教鞭をとった方だと、本書に冠せられたご子息の序文に書いてあります。「校讎蒙拾」は校勘学の入門書、「読韓蠡解」は韓愈の詩の注釈。江氏が校勘学にも韓愈にも詳しかったことが本書から見て取れます。

「校讎蒙拾」、漢籍の校勘学に関する、とてもよい入門書でした。本文を駢文で書き、それに詳しい自注を加える形式です。入門書といってもなかなか高度で、校勘学に少しなじんだ人に向くのかもしれません。白状すると、私の学力では、本文だけを読んで内容を理解することは困難でした。

銭大昕『十駕斎養新録』、王念孫『読書雑志』、王引之『経義述聞』、俞樾『古書疑義挙例』、楊樹達『古書句読釈例』といった校勘の名著から豊富な例が引用されており、それらの著作への手引きともなっていますが、それのみならず、この本なりの体系が備わっており、読んで楽しむことができました。

「瓊」という字については、『説文解字』が「瓊,赤玉也」というのに基づき、赤い玉(ギョク)だとする説がありますが、韓愈の詩が雪を表現してこの字を用いるからにはそれはおかしいと江氏は言い、「瓊,亦玉也」が正しく、「赤」は「亦」の誤り、とする段玉裁説を肯定しており、痛快でした。

なお注に引かれた文などに不審なところがありました(句読など)。時間をみつけて確認しておきます。

この本も海豚出版社の一冊。16.80元と安価であったために手にしたのですが、買ってよかったと思いました。

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「『校讎蒙拾 読韓蠡解』」への3件のフィードバック

  1. 古勝 隆一先生
                           2016年5月2日
    ◎「韓愈の詩」。
    江辛眉氏の引かれる韓氏の雪を表現して「瓊」字を使った詩とは、

    「春雪閒早梅」・・・・・・・・未許 瓊華比
    「詠雪贈張籍」・・・・・・・・眞是 屑瓊瑰
    「酬王二十舍人雪中見寄」・・・今朝 蹋作 瓊瑤跡

    以上のいずれかでしょうか。「瓊華」・「瓊瑰」・「瓊瑤」、いずれも詩語として「玉之美者也」の意に使われていて、「瓊,赤玉也」・「韓愈の詩が雪を表現してこの字を用いるからにはそれはおかしい」という江氏の説は段氏の「瓊,亦玉也」を補強するとは思えません。「唐人陸德明、張守節皆引作『赤玉』。則其誤已久」段注。「赤」と「亦」とが字形の近似の為に誤ったと言うのならば理解できるのですが。藤田吉秋

  2. 藤田さま

    コメントありがとうございます。

    「校讎蒙拾」巻二「体用第三」に「河豈鉤般?瓊非赤玉」という本文を示し、その注の中で、瓊が赤玉でないことを説明したものです。

    まず引かれているのは「詠雪贈張籍」の「定非燖鹄鹭,真是屑瓊瑰」で、魏本に引く「補注」と方成珪『韓集箋正』とが長々引用されています。これらはいずれも、「玉之美者」という毛伝の説と「赤玉也」という『説文』の説とを踏まえるもののようです。引用文中には、韓愈のみならず、謝惠連「雪賦」の「庭列瑤階,林挺瓊樹」なども挙げられています。

    その上で、江氏は次のように総括を加えています。

    今案:“赤”與“亦”,字形相涉,《詩傳》屢言“瓊,玉之美者。”猶言瓊是一種美玉。故段懋堂《說文解字注》易“赤”為“亦”,自與《詩傳》之旨暗合。千載而下,有此具眼,真校讎之佳例也。

    江氏は「赤玉」説の存在自体を否定しており、それが面白くて紹介したまででした。おっしゃるように、段玉裁がいなければ存在し得なかった考え方だと思います。

    学退覆

  3. 古勝 隆一先生
                           2016年5月2日
    ◎「韓愈の詩」。
    いかにも、江氏の説は段氏の「『亦』各本作『赤』。非」を補強するものですね。誤解していました。藤田吉秋

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