日本漢文のなかの固有名詞


『論語義疏』の標点本はいくつかあるようですが、私が最近読んだのは、高尚榘氏のものです。『論語義疏』高尚榘校點,中華書局,2013年。

武内義雄が整理した懐徳堂本に依拠した本であり、かなりよく懐徳堂本の本文を伝えています。附録として、大正十二年(1923)五月に西村天囚(1865-1924)が漢文で書いた序まで載せてあるのもありがたいことです。

その序のなかに、「暨應神朝,百濟獻《論語》,孔子之書,始入我國」とあります。もちろん、応神というのは我が国の天皇の名ですが、標点を見ると、整理者はそれに気づいていないようです。

また、「謹按先皇教育勅語示法後世,炳如日月,其所謂忠、孝、友、和、信,與智能、德器、恭儉、博愛、義勇等條目,皆符於孔子之教」ともありますが、どうも「教育勅語」が固有名詞であることを知らなかった様子です。

標点者はほぼ正確に著者の意図をくみ取っているものの、ちょっとした知識のギャップもうかがわれて、何となく面白く思われました。

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「日本漢文のなかの固有名詞」への4件のフィードバック

  1. 古勝 隆一先生
                           2016年10月13日
    ◎「(天皇の名)整理者はそれに気づいていない」・「(教育勅語)固有名詞であることを知らなかった様子」。
    高氏本の「應神」に罫線が無く、「教育勅語」に波罫が無いのがお説の理由でしょうか。懐徳堂本は「應神」、「先皇」の前を闕字にしていますから、高氏も「應神」は天皇、「教育勅語」は「先皇」すなわち明治天皇の勅語、ということは知らぬまでも気付いたものと思われます。藤田吉秋

  2. 藤田様

    コメントありがとうございます。ただ、ご指摘の件について、私は違う意見を持っています。標点の符号にあらわれるものがすべてだと考えます。

    学退覆

  3. 古勝 隆一先生
                           2016年10月14日
    ◎「皆符孔子之教」。
    高氏の翻刻は「皆符於孔子之教」としています。西村氏の原文は「皆符于孔子之敎」。高氏はまた「皆符於孔子之教、而勅語以爲皇祖皇宗之道」と「謹按」を「皇祖皇宗之道」まで掛けて読んでいます。引用される時はここまでされる方が親切かと思います。
    ◎「標点の符号にあらわれるものがすべて」。
    標点本の固有名詞の左側に付けられた傍線(人名・地名・元号)・波線(書名)を中国では何と呼ぶのでしょうか。私は罫線、波罫などと言ってしまいましたが、ご存じでしたらお教え下さい。藤田吉秋

  4. 藤田様

    ご指摘に感謝いたします。「於」字、さっそく加えておきました。

    傍線に関しては、中国では、「书名号」「专名号」とそれぞれ読んでいるようです。「标点符号用法」という国家規格のpdfが、ネット上にありました。
    http://www.fdcollege.fudan.edu.cn/_upload/article/1e/26/64fb1ac349318df5b653833e8a16/f141014a-6f40-44d2-af62-7fbcda28a657.pdf

    今後ともよろしくご教示ください。

    学退覆

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