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平凡社東洋文庫版『漢文研究法』


狩野直喜『漢文研究法』(みすず書房、1979年)については、このブログでもたびたび取り上げてきたところで、私のみならず、漢籍に関心を持つ人々に愛読者の多い一書であると思います。

昨年のことでしたか、平凡社の編集者、直井祐二氏から、同書を平凡社東洋文庫の一冊として復刻したい旨、お話をうかがいました。みすず版が長らく版元品切れとなっていたため、直井氏が狩野直禎先生のご遺族と相談の上、実現した話とうかがいました。

少々お手伝いなどをして、その東洋文庫版が近日中に出版される運びとなりました。

漢文研究法—中国学入門講義
内藤湖南と並ぶ京大東洋学の創始者、狩野直喜が約百年前におこなった一般向け講義。文学・史学・哲学・地理等を総合する中国学入門。
狩野 直喜 著 狩野 直禎 校訂
シリーズ・巻次 東洋文庫 890
出版年月 2018/07
ISBN 9784582808902
Cコード・NDCコード 0100 NDC 020.22
判型・ページ数 B6変 240ページ

kanbun狩野先生の学問を心から敬愛する者として、このお手伝いをさせていただけたことは、まことにありがたいことでした。

校正中は、学問の浅さからこの名著にとんでもない誤りを出しはしないかと日々畏れる毎日でした。みすず版の瑕疵を数十箇所ほど訂正することができたのは、小さな喜びでしたが、その一方で私のせいで別の誤りを出していないかどうか、心配はあります。本が刷り上がった今となっては、読者の皆様に点検していただくほかありません。

なお、みすず版で狩野直禎先生をはじめとする方々が付けられた補注は、一部改めたのを除き、ほぼそのまま録してあります。21世紀にふさわしい新たな補注を付け直すことができなかったのは残念といえば残念なのですが、その仕事はよりふさわしい方々にお任せしたいと思います。

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日本のことは勉強したくない、という考え


齋藤智寛氏「『万葉集』と中国の思想」(『わたしの日本(ニッポン)学び』東北大学出版会、2017年、所収)を読みました。 個人的に、共感する部分が多く、かつての同僚である齋藤氏への敬愛の念が深まりました。

内容も素晴らしかったのですが、「はじめに」のところで特に心をとらえられました。長い引用になりますが、ご紹介させてください。

筆者は日本で生まれ育ち日本の大学に勤務しているのですが、これまでずっと母語や自国の文化に正面から向き合うことを避け続けており、大学で中国思想という専攻を選んだのも一つには日本のことは勉強したくないという思いがあったからです。筆者にとって、前近代の中国知識人がそうしたように儒家や道家の古典をひもとき、今の中国人が子どもの頃にそうしたように中国の児童書……などを読み、そうして習得した中国語で中国やその他海外の研究者らと議論することには、人生をもういちど生き直すような喜びがあります。中国の伝統思想に関心を持つには人それぞれの動機があり、日本人であれば自らの文化の源流を知りたいという欲求から漢文を読むことも大いにあり得るでしょう。でもわたしは、出来ることなら日本人として中国の古典を読みたくはありません。そうでなく、むしろ日本語が読める中国人のような驚きをもって日本の古典を読みたいと願っています。

齋藤氏のごく個人的な思いなのですが、私にも大いに思い当たるところがあります。決して、中国文化に関心を持つ日本人がみなそうあるべきだ、といった話ではありません。ただ、齋藤氏や私はそうだ、というだけです。

そのことは、ごく個人的な思いなので、わざわざ人に言ったり書いたりする必要もないと思って生きてきましたが、齋藤氏がずばり書いてくださったので、こうして、私の思いを代弁するものとして紹介しました。

講演の記録ですが、その内容も立派なものです。文学・宗教・文化といったものへの繊細な目配りがあり、感慨深く読みました。

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有文斎主人的博客


有文斎主人的博客
有文斎主人的博客

中国の大学で教鞭を執っている畏友が、「有文斎主人的博客」という興味深いブログを書いています。

漢学に関することを中心としてお書きになっていますが、この有文斎主人、どうやら本名を表に出していらっしゃらないので、ここでも名を伏せておきます(ただ、詳しくブログを読めば分かりますが)。

讀上海古籍出版社張一弓點校本《經典釋文》」と題された2013年12月4日付の記事には、私も登場していますので、漢語をお読みになる方は、ぜひご一読ください。

残念ながら、中国ではWordPressのサイトが読めないそうなので、向こうから私のブログを読んでもらうことは難しいのですが、こちらからは問題なく向こうのブログを読めます。こうして海の向こうでの有文斎主人の活躍を思うと、私にとっても大きな励みになります。

また、面白い記事があればご紹介します。