懐かしの熊本県立図書館


読書ブログ「積讀日記」を書いておられる、まっつんさんが、海野弘氏『日本図書館紀行』(マガジンハウス、1995年10月19日)という書物を紹介なさいました。

情報誌「ダカーポ」(現在は休刊中)の企画として、著者の海野氏が日本各地の図書館をめぐり、そこで本を調べ、読むという趣向のようです。それで、思い出したことがあります。

コロナが蔓延する一年前、2019年2月のこと、私は熊本県立図書館から講演をするよう依頼を受けました。旅費を出してもらえる限り、全国どこへでも行ってお話ししたいと思っていたので、とても嬉しく光栄に思い、出かけてきました。

松崎慊堂(まつざき・こうどう)という熊本の益城出身の儒者がいて、当地でもすでに知る人が少なくなっているのですが、この人物の紹介をおこなうため、わりと時間をかけて準備をしていました。

そのころの熊本市には、まだ2016年4月の震災の傷跡が残っていましたが、もともと素晴らしい土地で、特に水がよく、何を飲食しても格別にうまいところで、たちまち気に入りました。しかしそれ以上に興味深かったのは、講演の前日に熊本県立図書館を訪問したところ、それこそ郷土資料のコーナー(といっても、書架が何列も並ぶ、非常に充実したところでしたが)に、これまで見たことのないような書籍や調査報告などが豊富に置かれていて、松崎慊堂についての資料もかなりたくさん集めることができたことでした。それらの資料は、翌日の講演の内容にも盛り込みました。

まっつんさんご紹介の本にもあったように、「もっと時間があれば」との思いは確かにあり、時間不足を嘆きましたが、それでも十分に満足しました。県立図書館の方々が非常に熱心に準備してくださったことにも、いまさらながら感謝の念が起こります。

くまもと文学・歴史館という施設が図書館に併設されていて、その時ちょうど「武士の教科書―永青文庫寄託漢籍資料から―」という展示をしており、こちらも非常によい勉強になりました。

日本各地、その土地その土地に、それぞれ興味深い特徴があると思い知りました。いまとなっては、このような旅行すら不自由で、思い出してもまるで夢のようですが、まっつんさんの記事を拝見しながら、熊本のことを懐かしんでしまいました。

カテゴリー:

コメントを残す