『中国注疏講義―経書の巻』が出版されました


しばらく前のことになってしまいましたが、拙著『中国注疏講義―経書の巻』(法藏館、2022年9月)が出版されました。ありがたいことに、広汎な読者から支持されていることを、SNS等を通じて知りました。

同書は、儒教の経典である「経書」を自力で読んでみよう、というもので、決して気楽な読み物というわけではありません。経書は非常に難読で、やっかいですから。

しかしながら、前近代の東アジアのことを学ぶ際、さまざまな局面において、この経書が登場するので、ここをきっちり押さえておくことは、現代人の精神衛生にもよいのではないか、というのが私の考えです(モヤモヤはなるべく解消したほうがよいでしょう)。経書は、分かったような分からないような、謎めいた存在です。

その経書を読むための手順、手続き、方法を、なるべくクリアに分解して示してみよう、という趣旨で書いてみました。

流し読みしてもらっても、それなりに理解できるようにはしているのですが、そういった軽い読書にのみとどまらない読み方がなされているようです。予想した以上に、学習対象として真剣に取り組まれる読者が多く、これは驚きでもあり、もちろん嬉しいことでもあります。読んでみたいというかたが、こんなにいらしたのか、と深い感慨を抱いています。たとえ一言一句であろうとも、書物を真剣に読もうとするひとを私は尊敬しますし、本書がその手がかりとなるなら、それは大いなる光栄です。賞を受けることなどより、何倍も嬉しいことです。

私は研究の仕事をしているので、その成果を学術論文というかたちで公表することが大切なのですが、一方、読書のしかた、読解のプロセス、参考文献の使い方などを、誰にも理解できるように公開していくことも、自分のような比較的恵まれた環境に身を置く者のなすべきことなのではないか、と考えています。

同業者の秘密のノウハウを公開して仕事を邪魔するな、という批判もあるかもしれませんが、今の時代、それは当たらないと感じます。参入の障壁を低くして、学習者を増やすことは、長い目で見れば、中国古典研究の活気を喚起することにもつながるはずだと信じています。

これからも数冊の本を書いてゆくつもりなので、よろしくお支えください。

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