信南山


『詩経』の詩は、何しろ大昔のものであり、我々にとって難解ですが、少なくとも、どこが押韻しているのかは、王力『詩経韻読』(上海古籍出版社、1980年)を調べれば大体わかります。

たとえば、小雅「信南山」の詩は六章から成りますが、その第二章は、王力によれば次のように押韻します(『詩経韻読』、p. 309)。

上天同雲(hiuən),
雨雪雰雰(phiuən)。【文部】
益之以霢霂(mok),
既優既渥(eok),
既霑既足(tziok),
生我百穀(kok)。【屋部】

「換韻」といって、韻が変更されているところは、一般に意味の切れ目と考えることができますので、この章は、「上天同雲,雨雪雰雰」がひとまとまりで、「益之以霢霂,既優既渥,既霑既足,生我百穀」が別のひとまとまりだとみなせます。訳したり解釈したりする際には、韻を意識することが大切でしょう。

また、第三章は、次のように押韻します。

疆場翼翼(jiək),
黍稷彧彧(iuək)。
曾孫之穡(shiək),
以為酒食(djiək)。【職部】
畀我尸賓(pien),
壽考萬年(nyen)。【真部】

この章は、換韻からみて、「疆場翼翼,黍稷彧彧。曾孫之穡,以為酒食」までがひとまとまり、「畀我尸賓,壽考萬年」がまたひとまとまり、となっているわけです。

最近、ある書物を見ていると、この「信南山」の詩が全文引用されていました。中国古典の専門書ではなかったので、目を惹かれたのですが、第二章・第三章について、引用文の句読が以下のようになっていました。

上天同雲,雨雪雰雰。
益之以霢霂。
既優既渥,既霑既足,生我百穀。

疆場翼翼,黍稷彧彧。
曾孫之穡。
以為酒食,畀我尸賓,壽考萬年。

第二章の第三句が浮いていることと、第三章の第三句・第四句の処理が、おかしいように感じられました。些細なことかもしれませんが、気になったのでここにメモしておきます。

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