拙著『目録学の誕生』が刊行されます


ISBN978-4-653-04376-8久しぶりに単著を出せる運びとなりました。『目録学の誕生』というタイトルで、勤務先の名を冠した「京大人文研東方学叢書」というシリーズが臨川書店から刊行されていますが、その第6冊です。

コラムなどは楽しんで書きました(以前このブログに書いたことをまとめ直したものも少しだけあります)。広くお読みいただきたいと願っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

刊行は、本年3月上旬の予定です。以下のリンクから予約いただければ幸いです。

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『目録学の誕生−劉向が生んだ書物文化』 京大人文研東方学叢書 6
古勝隆一著
臨川書店、2019年3月
四六判・上製・紙カバー装・帯付 総268頁
本体3,000円+税
ISBN978-4-653-04376-8

人にとって書物とは何か。なぜ、書物は必要なのか

書物をぬきにして中国文化を語ることはできない。その書物は、どのように書かれ、整理され、系統立てられ、そして伝承されてきたのだろうか。前漢にはじまる皇室の図書事業は、やがて独立した「書物の学問」=「目録学」に発展し、過去から未来へと学問をつなぐ知の集積がはじまっていく。目録学の始祖とされる劉向(りゅうきょう)は、何を考え、何を成し遂げたのか。原資料と先行研究を幅広く渉猟し、目録学の誕生史を描き出す。

 

以下、目次を掲出します。

・はじめに

・序章 目録と目録学
第一節 校書と分類の関係
第二節 目録と書目
第三節 「校讐」の起源―校正の始まりについての一試論
第四節 中国学術の全体像を俯瞰する
第五節 「儒」の位置
□コラム 目録学と校讐学

・第一章 劉向目録学のインパクト
第一節 二劉の学の大きさ
第二節 書目の背後にあるのは「学術」である
第三節 術をめぐって
第四節 官職と書物
第五節 『漢書』芸文志の序文を読む
第六節 「大序」は誰の文章か
□コラム 書物と国家

・第二章 目録学前史―戦国時代から前漢時代における学術と学派
第一節 諸子を批判する諸子
第二節 批判精神の発露―『荀子』非十二子篇
第三節 道術の衰え―『荘子』天下篇
第四節 学派内部の分裂をめぐって―『韓非子』顕学篇
第五節 司馬談の学術観
□コラム 荀子は子思と孟子を批判したのか

・第三章 前漢時代の皇帝と学問
第一節 焚書のダメージ
第二節 漢初の学問好尚の変化
第三節 武帝と儒教
第四節 ポスト武帝時代から前漢末にいたる学問好尚
第五節 前漢における六芸の位置
第六節 漢室と神仙思想
第七節 前漢における図書蒐集の歴史
□コラム 芸をめぐって

・第四章 劉向の家系と学問
第一節 『史記』楚元王世家と『漢書』楚元王伝
第二節 劉向の祖先、楚の元王
第三節 劉交の子孫たち
第四節 劉向の曽祖父・祖父・父
第五節 劉向の生涯
第六節 毀誉褒貶を生んだ劉歆の生き方
□コラム 劉安と劉向

・第五章 『別録』と『七略』
第一節 『別録』と『七略』
第二節 『七略別録』とは何だろう
第三節 『別録』『七略』のその後
第四節 『別録』『七略』の輯本
第五節 姚振宗輯本の登場
第六節 『別録』『七略』に著録された書物
第七節 劉氏校書と『漢書』芸文志
□コラム 姚振宗とその著作

・第六章 校書の様相
第一節 校書を担ったのは誰なのか
第二節 校書の記録―「荀子書録」を例として
第三節 校書の実態―『戦国策』の場合
第四節 序録に見える「中書」
第五節 校書はどこで行われたのか
□コラム 天禄閣から飛び降りた楊雄

・第七章 『七略』の六分類
第一節 なぜ「七」略なのに「六」分類なのか
第二節 『七略』の六分類
第三節 輯略について
第四節 六分類の体系性をめぐって
□コラム 数術略なのか術数略なのか

・第八章 ポスト劉向時代の目録学
第一節 劉向らの校書は無力だったのか
第二節 劉向らが校讐した本の運命
第三節 劉向らの校書結果の影響
第四節 四部分類の誕生
第五節 現代にも残るその影響力
□コラム 劉向的分類を乗り越えることの難しさ

・第九章 劉向の学を広め深めた学者たち―鄭樵・章学誠・余嘉錫
第一節 鄭樵の学術観―理想の学術分類を目指して
第二節 章学誠の見た劉向―目録学の理念
第三節 余嘉錫の目録学―近代に劉向を伝える
第四節 目録学は本当に劉向が始めたのか
□コラム 「言公」の読みづらさ

・終章 書物はなぜ必要なのか
第一節 書物は聖人が遺した糟粕なのか
第二節 劉向の思い
第三節 書物肯定と否定のはざま

主要資料・参考文献一覧/あとがき/図版出典一覧/関連年表/索引

“拙著『目録学の誕生』が刊行されます” への 6 件のフィードバック

  1. 匿名の方、

    どうもありがとうございます。コメント下さったことに気がつかず、お礼が遅れましたが、どうぞよろしくお願い致します。

    先日、私のもとに見本が届きました。そろそろ配本されそうです。もう少々、お待ちください。

    古勝隆一

  2. amazonで予約しました。ちょうど今読んでいる「老子(馬王堆甲本版)」池田智久,講談社学術文庫(2019)があと少しで読み終わりそうなので、到着したらさっそく拝読させていただきます。

    私にとってまったく未踏の領域なので楽しみにしています。

  3. 読了しました。専門書ですが、丁寧な文章でサクサク読み進めました。

    中国最古の書籍目録は、前漢に作られた、劉向・劉歆の「別録」・「七略」です。しかし残念ながらそれらは唐代の末期ごろに失われて現存しません。

    本書は、そもそも目録とはなにか、目録を作るために校書するとはどういうことかについて、時代をさかのぼり先秦時代から検証し、また逆に「漢書芸文志」等の後世の目録や文献に残された「別録」・「七略」に依拠した記録を検証し、歴代の文献学研究の成果を継承し、~失われた書籍目録である「別録」・「七略」と、その成立状況とをできうる限り再生する~ という、そういった内容でした(かなり端折っています ~詳しくは目次を~)。


    皇帝のためだけの”秘蔵の書”の整理、皇帝に要略を伝えるためだけの校書であり目録であったという点が興味深かったです。

    ~失われた古代文献を求めて~ ロマンを感じました。楽しかったです(読書感想文になってしまい申し訳ありません)。

  4. 秋山様

    さっそくお読み下さったのですね。本当に嬉しく存じております。また、的確におまとめくださいまして、まことにありがとうございます。

    古勝隆一

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