『説文解字新訂』


『説文解字』の閲読用のテクストを探していたところ、臧克和、王平校訂『説文解字新訂』(中華書局、2002年)を持っていることを思い出しました。

この書物は、大徐本(陳昌治本、すなわち一篆一行本)をもとに整理されたもので、字の排列など、基本的な内容は底本の通り(ただし第15篇にもともとある540部の目録は省かれています)ですが、ピンインが注記してあり、また各字の古文字の字形を参考として載せてあることなど、内容が足してあります。

古文字の字形は、『甲骨文合集』『殷周金文集成』『睡虎地秦簡文字編』などの編纂物から転載されているほか、第6篇上の木部については、唐写本『説文』からも採られています。それらの古文字の字形を参照して『説文』の篆文を観察すれば、文字変遷の一面を知ることもできるわけです。

また、『説文』の字形(小篆や古文など)が明らかに変化している(、というのは、後世の転写の誤り、の意でしょう)場合には、アスタリスクを付け、注意を促してくれているのも、親切です。

索引も充実しており、画数・現代音から引くことができて、たいへんに重宝します。

横組みの繁体字を用いて、標点・整理されています。大徐本の最善校訂本を目指しているわけではないので、研究論文などに引用する用途に向きはしないでしょうが、横組みに対して抵抗感のない方には、閲読用の『説文解字』としてお薦めできます。私もこのところ、『説文』を見る機会を増やしているので、この本も用いてさらに『説文』に親しみたいもの、と願っています。

*『説文解字新訂』臧克和、王平校訂(中華書局、2002年)、Webcat所蔵図書館は24館。

“『説文解字新訂』” への 4 件のフィードバック

  1.  Xuetui様、お久しぶりでございます。

     私も現在、中華書局の影印本に目を通しています。実は、先日読書用に適した『説文解字』を探していたところ、ある書店で本書を見つけたのですが、結構な分量とそこそこなお値段のため、結局買うのを諦めてしまいました。30分は悩みました。立ち読みしただけですが、確かに読みやすいと感じました。こうしてご紹介して頂くと、「やっぱり買っておけば良かった」と少し後悔しています。2度目に読む時には、本書にしようと思っています。やはり読み方を知らないまま文字を目で追ってゆくのは、集中力を持続させるのが難しいです。とりあえず今は「部首」を意識して読んでいます。
     さらに、部首の暗記法や段玉裁による「許慎の意図」のご紹介ですが、私にとってタイムリーな内容なため、とても楽しく拝読しております。これまでは『説文』というと難解で縁が無い書物と思っていましたが、おかげさまで少しずつ身近に感じつつあります。これからもこのようなご紹介を楽しみにお待ちしております。

  2. まっつんさま、こんにちは。お忙しい中、コメントありがとうございます。

    実は、「續・積讀日記」に「結構いいお値段がする」と書いてあったのを見て、本書のことかな、と思い、ことさらに紹介した次第です。狙い撃ちです。

    『説文』関係の記事、アップしてゆきますので、また、覗いてみて下さい。

  3. 全然学問的に生産性のない書き込みですいません。『説文解字新編』という本が自分の部屋の真ん中ら辺にありまして、以前何かの本の名前を聞き間違えて買ってしまったもので、今回も期待したのですがやはり駄目でした。一年くらい前にご紹介あった『古代漢語虚詞詞典』も、じつのところ最初は別バージョンを買ってしまっていて、言い出しにくかったのですが、購書の教訓を得ました。『新編』というのをこの機会にまじめに中身を見たところ、学び易く、覚え易い、検し易い、という謳い文句であるものの、字を全部並べ替えているので、どうせ覚えるなら元のをそのまま覚えたいと思っています。

  4. 昭夫さま、コメントありがとうございます。

    そういえば、私も以前、その『説文解字新編』を買ったことがあります。結局のところ、使い道がなく、すぐに処分してしまいました。『古代漢語虚詞詞典』も同名や似た書名の本が多く、紛らわしいもので、確かに注意が必要ですね。

    買い間違えた本、気に入らない本は、すぐに処分した方が精神衛生上、よいと思います。使いやすい、よい本だけ手もとにのこせば、よい蒐集ができるはずです。

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