花園天皇の読書


京都国立博物館で開催中の展覧会「皇室の名宝」展の会期がそろそろ終わるので、あわてて参観してきました。

皇居のなかにある宮内庁三の丸尚蔵館には皇室の宝を収められており、以前、拝観したのですが、今回の展示はさらに見応えあるものでした。

なかでも面白かったのは、77「花園天皇宸記(巻第二十八)」でした。以下、図録から転載します(『皇室の名宝』、京都国立博物館、2020年。p. 222)。

花園天皇宸記 巻第二十八(三十五巻のうち一巻)
紙本墨書
縦31.7 長1836.0
鎌倉時代 正中元年(1324)
宮内庁書陵部

図録にはさらに「修学の一端をしめす正中元年十二月晦日条につづく「所学目録」では、同年に学んだ書名十五部、さらにかつて読了した書名九十余部を内典・外典・国典とに分けて記載する」とあり、私が特に関心を持っている「外書(=外典)」については、以下の書目が見えます。

左伝 毛詩 尚書 礼記
孝経 論語 孟子〔欠巻/古注〕
史記 漢書 後漢書
南北史抄 通鑑 老子 荘子〔欠〕
荀子〔欠〕 楊子法言 鬼谷子 淮南子〔欠〕
文中子 国語 宋斉丘化書
史通 帝範 臣軌 貞観政要
文選 帝王略論〔三巻〕 孝経述義
礼記子本疏〔欠〕 尚書正義〔欠〕 周礼〔欠〕
次礼〔欠〕 大

「欠」の意味、『周礼』が墨で抹消されていること、最終行の「大」の意味など、未詳の点が残るものの、ともかく花園天皇(1297-1348。在位、1308-1318)の読書を示す、たいへんに貴重な記録であろうと思います。

南朝陳の鄭灼撰『礼記子本疏義』は、早稲田大学にその巻五十九が伝えられる貴重な写本ですが(国宝)、この日記にもその名が見えていると知りました。これも全貌が知られない、『孝経述議』が見えるのも興味深いことです。

疫病流行のなか、出かけるかどうか少しためらいましたが、勉強になりました。

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