巻子本『礼記子本疏義』の声点


changzi
『礼記子本疏義』の「長」字

先ほど、『礼記子本疏義』の影印本の写真を撮影したところ、「長」字の右肩に声点(声調を表す符号)がついていることに気がつきました。

左下が平声、左上が上声、右上が去声、右下が入声です。ということは、この字を去声で発音せよ、という指示です。

『広韻』を見ると、「長」字には、三通りの読み方がありました。

  • 〔下平陽韻〕長,久也,遠也,常也,永也。直良切。
  • 〔上聲養韻〕長,大也。又漢複姓。晉有長兒魯,少事智伯。智伯絕之三年。其後死智伯之難。知丈切。
  • 〔去聲漾韻〕長,多也。直亮切。

去声で読めば、「長字」は余分な文字、という意味となり、「衍字」と同義となります。

この中国写本に声点がついているとは思いませんでしたので、たいへんに驚いております。ほかにも声点が影印本において確認できるかどうか、調べてみたいと思います。

なお、早稲田大学が公開している写真版は精細なものではありますが、この点を確かめることはできません。実物を見せてもらえば、これが確実に声点であることが分かるはずですが、国宝ですし、過去にも出陳されたことは一度しかないと聞きましたので、今後、その望みがかなうとも思えません。朱筆か墨筆かだけでも、知りたいところです(おそらく朱筆であろうと思います、羅振玉の影印本では、朱の部分がことさらくっきりと写っているので)。

点が加えられたのが、中国においてであったか、あるいは我が国においてであったか、これも確かなことがいえません。私の心証では、中国において、この写本を写した人が加えた点であるように思われます。

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